鳴いて血を吐く不如帰の巻。

 今日、9月18日は小説家・徳冨蘆花の命日で御座います。蘆花と言えば「不如帰」が有名ですが、大道芸の「のぞきからくり」の代表的な演目としても知られております。

「のぞきからくり」なんてもう知ってる人も少ないでしょうが、私は小さい頃、四天王寺の境内で見た事が御座います。婆さんに連れられてお彼岸だったかの様に思えます。からくりと言っても大きな紙芝居みたいなのをガラスの入った丸い覗き穴から見るだけで、特別な仕掛けは何にも御座いません。

只、場面に合わせて独特のリズムでストーリーを語る口調「父は、陸軍中将で~ぇ、その名は片岡浪子嬢・・・」「あああ、人間はなぜ死ぬのでしょう! 生きたいわ! 千年も万年も生きたいわ!」が、線香臭いざわついた境内の雰囲気と妙にマッチしていたのを憶えております。まぁ、家庭内の新旧思想の対立と軋轢、伝染病に対する社会的な知識等、昔の人の思考に合ったから演目として長く続いたんでしょうが、少なくとも子供向けでは無かったと思いますね。最も子供向けには「地獄・極楽」なんて演目も御座いました。

その後、「のぞきからくり」を演じていた親子(おじさんとお母さん、だったと思います)は、消えゆく大道芸の最後の演者として何回かTVに出演しているのを見ましたが、何時の間にか四天王寺の境内でも見かける事が無くなって仕舞いました。さて、今日の一句。

            蓑虫や 父と鳴けども 母恋し

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